2021年05月28日










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 本日はJ◆Bさんの『ホテルコンシェルジェのおもてなし』を読んだ。

 短編一発勝負。長さも手頃で短い時間でサクッと楽しめる。仕事を終え帰宅して、眠るまでの限られた時間で充分読み切れて楽しめるのは本当にありがたい。

  J◆Bさんの印象は手堅いプロット、簡潔な文体、というイメージ。それでも本作は文中に不倫をしている女性目線からの『なんで別れ話を切り出す前にセックス出来るの?』という魂の叫びがグッときた。

 セルパブ本を読んでいると、大半が綺麗な文体で描写も手堅くて、私のような偏食家には物足りなく感じることが多い。もっと『凄み』を味合わせてくれ! と思うこともしばしば。

 その点、この作品は優等生的な作りながらも、こういった女のドロドロとした情念が随所に描かれており、 そこが良い、と感じた。

 ホテルの一室で既婚男性と不倫をしている主人公女性、25歳からの大事な期間を五年も使ってしまい、今、捨てられようとしている。

 カッとなってボールペンで不倫相手の喉を突き刺して衝動的に殺してしまった主人公。ホテルの最上階で時間を潰し、犯行時間に出入りし、防犯カメラに残らないよう気を配りながら二時間ほどのちにホテルを後にする。

 翌日から新聞を見ても事件のことは出てこない。どういうことなのか。

 主人公と一緒の疑問を抱きながら読み進める。するとホテルの支配人から『忘れ物』という名目で覚えのないスーツケースが送られてくる。

 この中には一体何が入っているのか。人間が折り畳んで押し込まれている重さ、と思えばまさしくそれくらいの重量だ。

 ホテルからの謎の贈り物と、謎のスーツケースが引き起こす異様な現象。それは自分の罪の意識が産んだ幻影なのか、それとも殺した不倫相手の怨霊なのか。

 寝る前の一本に程よい分量。オススメです。 

(21:14)

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